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執筆者の写真整形 内藤

関節包の部分的な拘縮(tightness)による骨頭の偏移(obligate translation)について

理学療法士の下村です。


今回は肩関節の疼痛の原因の一つとしてobligate translationの説明をします。


●obligate translationについて

 関節包と関節上腕靭帯は静的安定化機構として肩関節運動の最終可動域で適時緊張することで骨頭に求心性を与え、関節の安定化に働いています。しかし、関節包と関節上腕靭帯の部分的な拘縮により、通常よりも最終可動域が早まり拘縮部分の緊張が過度に高まることで、可動域制限とともに骨頭を反対側に押しつけ偏移させる力が働くことになります。これをobligate translationと言います。



外転:下方関節包のtightnessが骨頭の上方偏移に働き、obligate translationによる挙上最終域での肩峰下インピンジメントを引き起こすことになります。このような症状に注意を払わなければ急性炎症痛の再燃につながるため、痛みを無視した運動療法は禁忌です。


内旋:棘下筋の硬さは、肩関節伸展・内旋に伴う棘下筋の緊張により、骨頭を前方に押し出すobligate translationを生じさせます。



●肩峰下インピンジメントについて

 肩峰下滑液包(subacromial bursa : SAB)、三角筋下滑液包、烏口下滑液包は解剖学的に同じ深さの滑液包群です。通常、第二肩関節では決してインピンジメントが起こらないように緻密に機能しています。SABは棘上筋腱の滑動を保証する役割を担っていますが、挙上動作を行う限り、SABは肩峰下で圧迫刺激にさらされていることに加え、血管・神経の供給が豊富であることから、炎症を生じやすい組織と言えます。

 肩峰下滑液包や腱板炎で腫脹や肥厚、癒着が生じると棘上筋腱の滑動が制限され、肩峰下でのインピンジメント症状の発症を高めることになります。





●理学療法展開について

 一般的な他動的ストレッチ、相反神経支配(Ⅰa抑制)の利用や最大収縮後の士官などを組み合わせます。しかし、挙上方向などでのアプローチ中に第二肩関節周辺の痛みのためそれ以上のストレッチができない場合は、プレスアウトストレッチや解剖頸軸回旋を用いたストレッチを実施します。

 プレスアウトストレッチは、筋の走行に対して直角に押し出す(press out)ように実施します。実施できる筋は、大胸筋、小胸筋、大円筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋。

 解剖頸軸回旋は臼蓋に対して垂直に置いた解剖頸軸をスピンさせると、大・小結節が烏口肩峰アーチと並行の位置関係を保ちながら回旋します。よって、大結節が第二肩関節をくぐらないで通過できるため、インピンジメントによる痛みを回避でき、関節包や靭帯、筋のストレッチ効果を得ることが可能です。制限因子の判定は、防御収縮の影響が少ないため、最終域で筋が緊張すればそれが制限因子であり、筋の緊張が強くなく終末感に硬さが出る場合は靭帯性や関節包性の制限と言えます。


1)西川 仁:肩関節周囲炎の機能解剖学的病態把握と理学療法:p650~663

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